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226.『密命』(改題は『粉飾決算』)
226.『密命』(改題は『粉飾決算』)_a0020116_10162276.jpg一気読みを終えたばかり。面白かったネ。出版社の売り用フレーズを引用。
大手商社の扶桑通商は赤字決算になり、希望退職の募集を始めた。法務部に籍を置く芦田慎二は、ある日専務に呼ばれ、左遷を言い渡される。半年前、部長のポストを後輩に奪われて以来、慎二は出世競争から脱落していたのだ。異動先で最初に命じられたのは、ヤクザ相手の不良債権回収だった。
この架空の「扶桑通商」なる大手商社は実在の「M物産」だろう。著者の高任和夫氏の元・勤務先。結構生々しく描かれているその内情やら“エリート社員”とかいう人種の実態描写を苦笑交じりで(&オモシロ楽しく)読んだ。主人公がイイ。高任和夫サンの作品は皆そうだが(といっても3作品しか読んでいないけどさ)。抑え気味の『矜持性』が共通して流れている。共感。
10数年前、ひょんなことで知り合った元・大手商社マンの知人がいる。知り合った当初は“現役”だった。思うところがあって退職。その前後から連絡が途絶えていたんだが、数年前、突如手紙が。当方の著書を本屋さんで目にし購入してくれたそうな。2700円もはたいてくれて、おまけに内容なんてナンモ分からなかったにもかかわらず。
その知人が記した、あるくだりを読んでニタリとした。「商社とか銀行のように物作りとは無縁な世界にいる人間は根本的な部分で信用ができない──ウンヌン」。この『密命』なる作品に、ほとんど全く同じ台詞を主人公が語る部分があって驚いたが。高任さんが小説家に転身した理由のひとつでもあるんだろう。『中高年の皆サン!特に商社や金融関係の(物作りとは無縁の)皆サン!ブログを開設するか、農業ごっこをぜひ!』と声高に叫ぶ(つもりの)自分がおわす

※なおこの作品、文庫版化に際し表題が『粉飾決算』と改名。そう変えた理由は敢えて知るさないが。旧題のほうがまだいいね。いちばんイイのは『大手商社に巣食う小心陰険えり〜と社員どもの哀れな末路とマトモな社員の新たな旅立ち』だけどネ。
by KOKUZOBOSATSU | 2005-05-28 10:37 | ●書評&オススメろん